阿翁石の石碑の洗浄・金箔貼りのようす。松浦市鷹島町の蓮浄院様にて
長崎県平戸市をはじめ、松浦市、波佐見町など長崎県北部で墓石のお仕事をさせていただいております、中村石材工業の中村です。松浦市鷹島町の蓮浄院様にて、阿翁石の石碑の洗浄・金箔貼り作業をさせていただきました。
松浦市鷹島町 蓮浄院 阿翁石の石碑の洗浄・金箔貼り作業
我が家の菩提寺である鷹島町の蓮浄院様からご相談いただきました。来年、代替わりの晋山式を迎えられるにあたり、寺院内の石碑をきれいにしたいとのことでした。
こちらがその石碑です。「南無阿弥陀仏」のお念仏の下にお寺の由緒が記された石碑で、50年ほど前に建立されたものです。本堂の目の前の皆様の目に入る場所にあるので、きれいにして晋山式を迎えたいとご希望でした。
この石碑は、鷹島で採れる阿翁石(あおういし)で作られています。阿翁石は、通称鷹島石とも呼ばれる地元の石で、鷹島はもちろん、近隣の建築物にも多数使用されています。長崎県知事指定伝統的工芸品にも指定されている石です。
風化による劣化も少なく、御影石に比べると柔らかく粘りに富み、繊細な加工ができるという特徴がありますが、表面に苔がつくこともあり、今回の石碑は長い間に少しずつついた苔で表面が覆われています。まずは、この苔などの汚れを取り除くため洗浄作業から開始です。
高圧洗浄で大まかな汚れを取っていきます。大きな石碑なので、足場を準備して作業しました。
石碑の本体、台座部分も洗浄まで終えたところです。必要な場所には薬剤等も使いながらこすり洗いをして、丁寧に汚れを落としました。
お念仏の部分です。苔で真っ白になっていましたが、文字の周りの石肌が見えるようになりました。
彫刻部分は洗浄後、このようになっていました。はがれていた金箔は残っていたものをきれいに取り除き、カシューという下地塗料が少し残っています。ここからは、下地を直して金箔を貼る作業です。
まずは下地のカシューをきれいに整えていきます。下段の由緒の方は、先に白色を入れました。筆を使って一つずつ入れたので、かなりの時間がかかりました^^;
下地の乾き具合を見ながら金箔を貼る作業に移ります。初めて見た方にはちょっとびっくりされるかもしれませんが、風で金箔が飛んでしまうので、布を被って作業場所を覆って進めています。
数日かけて金箔入れまで終えて、すべての作業が完了です!
石碑正面です。はがれてしまっていた金箔も入れ直し、美しさを取り戻しました! 阿翁石の色合いも感じられるようになりました。
下地のカシューの上に、丁寧に金箔を貼りました。特に、阿翁石は少しでもはみ出すとやり直しがきかないので、文字からはみ出さないように慎重にすることが一番の注意点です。
「当山の由緒」と記された石碑下段です。ほとんど見えなくなっていた文字が色を入れたことで見えるようになり、菩提寺とはいえ分今回初めて知ったこともありました^^
石碑背面の建立年月や、発起人の方々のお名前などにも白色を入れています。背面は真っ白でほぼ見えない状態でしたが、これで晋山式には皆様に石碑の内容も見ていただけるようになりました。
ご住職様は、汚れがかなりひどかったのでここまできれいになるとは思っておられなかったようで、とても喜んでいただけました。自分の菩提寺でもある地元のお寺様のこうした工事に携わることができてとても光栄でしたし、気持ちよく作業させていただきました。このたびはご用命ありがとうございました。弊社にできることがございましたら、またお手伝いさせていただければ幸いです。
今回は、地元阿翁石の石碑の洗浄・金箔入れの工事でした。阿翁石は鷹島はもちろん、平戸や唐津など、周辺の地域でも建築物や石碑に使用されています。唐津と鷹島を結ぶ鷹島肥前大橋の親柱のほか、実は福岡でも筥崎宮の一之鳥居、福岡ソフトバンクホークスの必勝記念碑などに使われていて、広い地域で見ることができます。地元の石屋として良さを知っていただけると嬉しいですし、阿翁石の性質等も熟知していますので、建立のほかメンテナンスなど、これからも色々なお手伝いを続けていきたいと思います。
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